未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
何だか今の一件で、高めだったテンションが一気に下がった気がする。俺って、世間知らずの情けない男だったのかも……


「ご主人さま、どうしたんですか?」

「え? 俺は世間知らずなダメな男なんだな、と思ってさ」

「そんな事ないですよ……」


落ち込む俺をよそに、隣に座る小松は両手で包むようにミルクティーの缶を持ち、顔には笑みさえ浮かべ、何やら楽しそうに見える。

あ、そうだ。この低いテンションのまま謝ろう。赤ちゃんの事を……


「小松……」

「はい?」

「すまなかった」

「どうしたんですか? 急に……」

「本当にすまないと思う。この通りだ」


俺は小松に向かい、深く頭を下げた。


「もう……何の事ですか? あ、わかった。あの電話ですね? そうですよ……ご主人さまったら、酔って酷い事言うから……」


小松は、例によって頬をプクッと膨らませ、俺が大好きな怒った顔をした。久々に見たが、やっぱり可愛いなあ……なんて、ニヤケてる場合ではないな。


「そうじゃないんだけど、あれもごめん」


小松が屋敷を出て行った晩、俺は慣れない酒を飲んで悪酔いし、暴言を吐いて小松を怒らせた。

あれも悪かったとは思うが、赤ちゃんの事とは比較にならないと思う。


「ちょっとごめん」

「ひゃっ」


俺は、素早く手の平を小松のお腹に当ててみた。


「やっぱりかあ……」

< 164 / 177 >

この作品をシェア

pagetop