未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「ご主人さまは意外と面倒くさがりだから、手続きやその他諸々が面倒になったんですよね?」

「ち、違う! 俺が面倒くさがりというのは、確かにそうかもだが、それだけじゃない」

「ということは、それもあったって事ですよね?」

「む……」


小松め、鋭いなあ。


「面倒というのもあったけど、もっと大きな理由があるんだ」

「そうなんですか?」

「そうさ。それをこれから言うから、ちゃんと聞いてくれ」

「はい」

「コホン。それはだな、つまり、その……」


う……言いにくい。小松に大きな目でジッと見られ、俺の言葉を待たれてると思うと、緊張してますます言いにくくなる。

だが、今言わなければ、絶対にダメだ。言葉にしないと、俺の想いは小松に通じないのだから……


「お、おまえの事が、好きだからだ」


言った……

恥ずかしくて、つい小松から目を逸らしてしまったが、それでも言うだけは言った。これで俺の気持ちは、小松に伝わっただろう。


と思ったのだが、小松の反応がない。何かの言葉が返って来ると思ったが、それがない。もしかして、俺の声が聞こえなかったのだろうか。

そう思い、ゆっくり首を回して小松を見たら……小松は俺を睨んでいた。ほっぺをプクッと膨らませた、例の怒った顔で。いつもは可愛いと思うその顔だが、今はちょっと、いや、だいぶ違う。目が本気で怒っているのだ。なぜか……

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