未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「きゃっ」


小松もそれに気付いたらしく、慌てて俺から体を離した。


「さっさと退散しようか? 車を待たせてるし」

「は、はい」


俺は小松の肩を抱き、駐車場へ向かった。辺りはいつのまにか日が陰り、夕闇を迎えようとしていた。


「ご主人さま。私、どんな顔してお屋敷に戻れば良いのですか?」

「ああ、そうだなあ。神妙な顔してればいいんじゃないか? みんなには何も言ってないから、単なる夫婦喧嘩だと思ってるはずだよ」

「はい、そうします」

「でもね、今日は屋敷には戻らない」

「そうなんですか? いったいどこへ……?」

「それはちょっと待ってくれ。そう言えば、政宗君は君の体が楽になったと言ってたが、あれは……」


そう。だから俺は、てっきり小松は赤ちゃんを堕してしまったと思ったんだ。


「悪阻が落ち着いたんです」

「ああ、そういう事か? なるほど、ますます都合がいいな……」

「え?」

「いや、こっちの話」


駐車場に行くと、運転手さんが車から出て俺たちを迎えてくれた。


「待たせてしまってすみません」

「いえいえ、とんでもございません。さ、どうぞ……」


運転手さんが後部座席のドアを開けてくれて、小松を先に乗せた。そして、


「予約は取れた?」


小声で俺がそう聞くと、


「はい、取れました」


と、運転手さんは笑顔で答えてくれた。

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