未来から来た花嫁 ～迷走する御曹司～

「信之さん、この人にしなよ？」

「ん？ 良さそうな人がいたのか？」

「うん、かなりいいと思う。ほら、見てよ？ 綺麗だし、頭良さそうだよ？ 少し年かもしれないけど……」


そう言って慶次はその令嬢の写真を俺に向けたのだが……

あれ？ この人、何処かで見たような……


「あっ！」

「ど、どうしたの？ 知り合い？」

「いや、そうじゃないんだが……」


俺はその令嬢の写真を見て思わず声を上げてしまった。なぜならその令嬢は、明らかに昨夜俺のベッドに全裸で現れた女性だったからだ。つまり、“未来から来た俺の花嫁”だ。


「えっと、名前は……浅井菊子さん、かあ。年は……ああ、やっぱりね。36だから信之さんの2つ上だね。家は……ちょっと田舎だな」

「…………」


なるほど。あの女性、菊子さんというらしいがは、叔父が俺の結婚相手として候補に上げた令嬢の中の一人だったわけか……


「ねえ、聞いてる？」

「あ、ああ、聞いてるよ」

「どう？ この人。少し年上だけど、2歳ぐらいなら問題ないでしょ？」

「それはまあ、そうだな」

「じゃあ決まりだね？ この人で……」


慶次はやたら嬉しそうな顔で俺に返答を迫った。

俺はこの菊子さんと結婚しなければいけないのだろうか。それが俺の運命、というか定めなんだろうか。そう思った時、なぜか小松の顔が俺の脳裏を過ぎった。