未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「怖いです。旦那さま……」


“旦那さま”ではなく、“信之さま”だろ? まあいいけど。

体を震わせながら俺にしがみつく小松。背は俺より頭一つぐらい小さくて、ちょうど俺の顎の下になった彼女の頭に、俺はそっと手を触れてみた。すると、小松の髪はふわっとして柔らかく、いい触り心地だった。

ああ、こんな風に女性に触れるのは久し振りだなあ。何年ぶりだろうか……

女の子って、こんなにも華奢で柔らかいものだったろうか。いや、それはきっと小松だからなおさらなのだと思う。もし俺が腕に力を入れ、ギューっと抱き締めたとしたら、この子はいったいどんな反応をするのだろうか……

してみようか?

いやいや、ダメだ。そんな、相手の弱味につけ込むような真似はすべきじゃない。

俺は、そっと押し返すようにして小松の体を俺から放した。名残惜しくはあったけれども。


「部屋で話を聞かせてくれないか?」


小松の顔を覗き込むようにして俺が言うと、彼女は潤んだ瞳で俺を見上げ、小さな声で「はい」と答えた。


小松はすかさずシーツを拾おうとしたが、その華奢な肩を俺は右手で押さえ、左手でシーツを拾い上げると、そのまま小松の肩を抱いて寝室へ戻って行った。

この子にはどこまで話せばいいんだろうか。そんな事を考えながら……

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