未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「君が見た事やあった事を聞かせてくれないかな?」


この間と同じく、4人掛けのソファーに小松と向かい合わせに座り、俺はそう切り出した。


「あ、はい。私はいつものようにお屋敷の夜回りをしていました」

「うん、ご苦労さま」

「ありがとうございます。えっと、旦那さまの書斎を点検した後……あ、不信な物は無いか見ただけで、何にも手を触れてませんので」

「それは気にしなくていいから、それで?」

「はい。書斎の点検が終わり、廊下に出ようとした瞬間……出たんです」

「幽霊がかい?」

「は、はい」

「顔を見たのかい?」

「はい、ほんの一瞬ですけど、見ました」

「女性だよね?」

「そうです。とても綺麗な方でした」

「そうか。で、一瞬というのはどういう事かな?」

「はい。一瞬で消えたんです」

「消えた? どういうようにかな?」

「そうですね……フッて感じでした。同時にその女性が纏っていた白い布、シーツですけど、が、パサッて感じで床に落ちました」


ああ、やはり小松は見たんだな。菊子さんが未来へ戻る、正にその瞬間を……

今までの俺は、その事については半信半疑であったが、ついに目撃者が現れたとなれば、もう信じざるをえないだろうなと思った。

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