未来から来た花嫁 ～迷走する御曹司～

「君が先ほど見た“生き霊”のような女性。彼女がその浅井菊子さんなんだ」

「…………えっ？」


小松は一瞬ポカンとし、次にハッとしたように目を見開いた。そして次には怒ったらしく、目を細めて俺を睨んだ。実に表情が豊かで関心する。


「もう、冗談はやめてください」

「それがね、冗談じゃないんだよ」

「そ、そうなんですか？」

「うん。僕も半信半疑だったんだ。彼女が未来からタイムスリップして来た、なんて話はね」

「タイム……スリップですか？」

「そう。君は彼女が消える瞬間を見たんだろ？ つまり、元の未来に帰って行ったわけだ。実は彼女が来たのは今夜が二度目でね」

「…………あっ。この間の夜。今夜と同じように、廊下にシーツが落ちていたのも……」

「そうなんだ。あの日、俺は初めて菊子さんに会った」

「そうなんですか……」


小松は、いかにも納得したと言いたげに、小さくだがしっかりと頷いた。予想外に呆気なくて、少し拍子抜けしてしまったのだが。