未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
兼続は俺と同い年でまだ独身。今は営業本部長という大した肩書きの持ち主だ。超異例の出世と言って良い。もちろん優秀だからだ。

おそらく兼続はもっと上へ行くだろう。役員まで登りつめるのは時間の問題だと思う。

彼と俺が出会ったのはかれこれ3年程前だ。当時の俺はこの会社とは無関係に、半ば道楽でカーレースに明け暮れていた。一応、国際A級のライセンスを持つプロのカーレーサーだった。

出来ればスーパーライセンス、つまりF1に乗るのが子どもの頃からの夢だったのだが、俺にはその素質がない事を自覚しはじめた頃、父親に説得されてレースをキッパリとやめ、この会社へ来た。そして、会社の事を手っ取り早く学ぶために営業をやってみろと言われ、配属された営業部の、当時の部長が兼続だったのだ。


一緒に仕事をしながら、兼続の優秀さは嫌という程わかった。また、実は彼もカーレースが好きだと分かり、自ずと話が合うようになり、いつしか俺達は親友と呼ぶべき間柄になっていた。


「ゴシップ雑誌か。それがどうした?」

「見てないのか? おまえの事が載ってるぞ」

「えっ?」

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