未来から来た花嫁 ～迷走する御曹司～

と一瞬驚いたものの、そんなはずはない。俺はタレントでも有名人でもないし、犯罪を犯した覚えもないのだから。


「おい、冗談はやめてくれ」

「冗談だぁ？ 俺はそんな暇じゃないよ。嘘だと思ったらページをめくってみろよ。最初の方に記事があるから。写真付きでな」

「そんなバカな……」


俺はそう呟きながら、兼続の向かいに腰掛け、その週刊誌を手に取った。そもそも俺は雑誌というものはあまり読まないし、ましてや兼続から渡されたそれは、有名人のゴシップばかり載せている低俗な雑誌で、正直言って購読する人の気が知れないぐらいだ。

兼続から言われるままにページをめくると、あられもない格好をした女性写真の後、いきなりある見出しが俺の目に飛び込んで来た。


『真田家の御曹司、ついに花嫁を決定！？』


「うわっ。何だ、これは……」


記事と一緒にモノクロの写真が載っていて、それは黒塗りの車から降りた直後らしい女性の立ち姿で、目を黒い線で隠してはいるが、正しく菊子さんで間違いないと思う。おそらくその写真は、昨日彼女が俺の屋敷を訪れた時に盗み撮りされたものだろう。

記事を少し読んでみた。


『本誌は、ついに財界の御曹司、真田信之氏の花嫁候補大本命をカメラに捕らえた。彼女はある地方の有力者の長女で、生まれながらのご令嬢だ。
数多くの候補者から彼女が選ばれた理由について、社交界に詳しいA氏に話を……』