未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
それから数日が過ぎた。今は、会議が終わり、早々に会社から屋敷へ戻る途中の車の中だ。


浅井家にはもちろんまだ返事をしていない。なぜか慶次からしつこいぐらいに催促されたが、返事の期限まで待てと言っている。

多少の迷いはあったが、既に俺の気持ちは決まっている。後は肝心の小松次第だ。正確には、あの子の気持ち次第。それに向けてそれなりの努力はしているし、徐々にいい感じになって来ていると思う。

明日は小松が休みの日だ。食事にでも誘って、俺の考えを打ち明けるとしよう。小松は驚くだろうな。そして、おそらく断るだろう。周囲の人間も反発するに違いない。しかし俺は説得するんだ。小松も、周囲の人間も、何がなんでも……


そう言えばヒロミは未だに姿を見せない。小松が言ったように、誰かに連れ去られたのかもしれない。だとしたら、ちゃんとエサを貰っていればいいのだが……

ん?

ヒロミは年老いたせいもあり、ある特定のエサでないと腹を壊したりする。動物の場合、それは生死に拘る一大事だ。まさかヒロミがそれをさらった人間に言える訳もなく、となると、ちょっとやばいかもしれない。


そう思ったら急にヒロミが心配になってしまった。もう間もなく屋敷に着くが、帰ったら小松を誘ってヒロミを捜しに行こう。今日は屋敷の外を捜してみるか……


そんな事を考えながら、窓越しに車の外を見ていたら、思いもよらない人物が目に止まった。

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