未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
そして小松は素早くその部屋に入り、ドアはすぐに閉じられた。
男、かあ……
嫌な予感が当たってしまった。まさか、という思いもあったのだが。
いや、待て。そうと決め付けるのはまだ早い。あの男は小松の兄か弟、つまり兄弟かもしれないじゃないか。弟がいる、というような話を聞いた気もするし。
俺はある事を確かめるべく、その部屋の前まで行った。そして、ドアに貼られた表札を見た。そう、男の苗字を確かめようと思ったのだ。もしそれが“本多”なら、あの男は小松の兄弟か、もしくは親戚という事になる。
それを願い、あるいは信じ、すがる思いで見たのだが……
“伊達”!?
表札に記されていたのはその二文字だった。“本多”ではなく。
という事は、あの若い男は小松の兄弟ではなく、親戚でもないと考えるべきだろう。つまりはボーイフレンド、あるいは……恋人。そう考えるほかない。
小松は俺に嘘をついたのだ。恋人はおろか、ボーイフレンドすらいないと。小松がやたらと人目を気にしていたのは、その事の証しに他ならない。
だが、解せない事もある。それは、なぜ小松は俺にそんな嘘をついたのか、だ。何のために?
ああ、そうか。信じがたいが、理由はそれしか考えられない。つまり、小松は俺に取り入ろうとしているからだ。俺に気に入られ、愛人か何かになりたいのだろう。そんな素振りは全くなかったけれども、それだけ役者という事か。
“可愛さ余って憎さ百倍”ではないが、俺の中で小松への思いは急激に変化していった。
屋敷へ向かってふらふらと歩く俺は、小松への複雑な思いと、肌を刺すような寒さで、泣きたい心境だった。
男、かあ……
嫌な予感が当たってしまった。まさか、という思いもあったのだが。
いや、待て。そうと決め付けるのはまだ早い。あの男は小松の兄か弟、つまり兄弟かもしれないじゃないか。弟がいる、というような話を聞いた気もするし。
俺はある事を確かめるべく、その部屋の前まで行った。そして、ドアに貼られた表札を見た。そう、男の苗字を確かめようと思ったのだ。もしそれが“本多”なら、あの男は小松の兄弟か、もしくは親戚という事になる。
それを願い、あるいは信じ、すがる思いで見たのだが……
“伊達”!?
表札に記されていたのはその二文字だった。“本多”ではなく。
という事は、あの若い男は小松の兄弟ではなく、親戚でもないと考えるべきだろう。つまりはボーイフレンド、あるいは……恋人。そう考えるほかない。
小松は俺に嘘をついたのだ。恋人はおろか、ボーイフレンドすらいないと。小松がやたらと人目を気にしていたのは、その事の証しに他ならない。
だが、解せない事もある。それは、なぜ小松は俺にそんな嘘をついたのか、だ。何のために?
ああ、そうか。信じがたいが、理由はそれしか考えられない。つまり、小松は俺に取り入ろうとしているからだ。俺に気に入られ、愛人か何かになりたいのだろう。そんな素振りは全くなかったけれども、それだけ役者という事か。
“可愛さ余って憎さ百倍”ではないが、俺の中で小松への思いは急激に変化していった。
屋敷へ向かってふらふらと歩く俺は、小松への複雑な思いと、肌を刺すような寒さで、泣きたい心境だった。