未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
メイド?
メイドが何でこんな夜中に……

そう疑問に思いながら、俺は「どうぞ」と言ってベッドから降りた。


「旦那さま、何かあったんですか?」


ドアが開くやいなや、そのメイドは緊張したような声で言った。


「いや、それは……」


何かあったのかと言えば、もちろんあったのだが、いきなり第三者に“未来から花嫁が来た”なんて言える訳もなく、俺は口ごもった。そして、


「逆に聞きたいんだけど、どうして何かあったと思ったの?」


と聞いてみた。


「はい。夜回りをしていたら、旦那さまのお部屋の前にコレが出てたものですから……」


メイドが言った“コレ”とは、彼女が胸に抱えている白い布らしい。そしてそれは……シーツだ、と思う。という事は、あの女性が体に巻いたはずのシーツが、廊下に落ちていたという事か?


「あ、分かりました。ヒロミちゃんが粗相をしちゃったんですね? すぐ新しいシーツをお持ちしますね?」

「ちょっと待って!」


ドアを閉めようとするメイドを、俺は慌てて呼び止めた。お婆ちゃんネコのヒロミが粗相をしてシーツが汚れ、それを俺が廊下に出した、というメイドの推理はとても理に適ってはいるが、今回はハズレだからだ。

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