未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
ヒロミを抱き上げ、振り向くと、小松は蒼白な顔をしていた。


「なぜここにヒロミがいるんだ?」

「そ、それは……」

「おまえが連れて来たんだよな? なぜだ?」

「も、申し訳ありません。ヒロミさまがあまりに可愛いので、つい……」

「なに?」

「申し訳ありません」


小松は俺に深く頭を下げた。
可愛いからさらったって? 何か解ったような解らないような動機だな。


「とにかく帰るぞ。話はそれからだ」

「は、はい……」


俺はヒロミを抱えて歩きだし、小松は後ろからトボトボといった様子で付いて来た。

ヒロミの事に関しては、意外な事にあまり腹は立っていない。それよりも、無事でいてくれた事への安心感の方が勝っているくらいだ。

だが、なぜ小松がヒロミをさらったのかは、よく考える必要があるように思う。単に可愛いからさらった、というのは違う気がする。わざわざそんな事をしなくても、屋敷でいつも見られるわけだし。


何かあるはずだ。本当の理由が。あるいは目的が。小松は、菊子さんと何らかの繋がりがあるらしい。その事も視野に入れるべきかもしれない。うーん……


あ、解った気がする。くっそ……そうだったのか……


それはひとつの仮説ではあるが、それで全ての謎が解けると思う。おそらく九分九厘間違いないだろう。菊子さんと慶次、そして小松の3人はグルだったのだ。みんなで俺を騙していたんだ。

くっそ……どうしてくれようか……

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