未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
暴かれた嘘
車の横に運転手が真っ直ぐに立ってこちらを見ている。小松と込み入った話をするなら、今しかないだろう。そこで俺は立ち止まり、小松を振り返った。


「小松」

「は、はい」

「ひとつだけ聞きたい」

「は、はい」

「おまえは何が目的なんだ?」

「え?」

「おまえは菊子さんや慶次とグルになって俺を騙した。更にヒロミの誘拐もした。その理由を聞きたい。何が目的でそうした?」

「な、何をおっしゃっているのか、私には解りません」

「惚けるな。もう全てわかってるんだ。無駄なやり取りをする暇はない。俺の質問に答えろ」


そう。俺はどうしてもそれが知りたかったのだ。小松が共謀して俺を騙した理由を……


「それは、その……」

「正直に言いなさい」

「お、お金です。お金が欲しかったんです」


小松は俯き、蚊の鳴くような小さな声でそう言った。それは俺が予想した答えではあったが、正直なところがっかりした。小松も、菊子さんや慶次と変わらず、欲の深い女だったわけだ。


「やっぱり金か。みんな金が好きなんだな」


小松は俯いたまま無言だ。


「なあ、そうなんだろ?」


俺はそんな小松の顎に指を掛け、グイッと上を向かせた。すると、小松は泣いていた。大きな目に、涙をいっぱい溜めていた。


「お、お金は好きです。いつでも使いたい放題のあなたには、その有り難みなんか解らないでしょうけど」


小松は、その潤んだ瞳で俺を見つめ、声は震えながらも、強い口調でそう言い放った。

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