【短編】異世界の館
「ずっと…ずっと…、す、好き…だったの!」


サキの柔らかい声が部屋中に響く。



俺は今まさに、至福の時を迎えていた。




ついに、如月サキからの告白…。




ついに…やった…!!




時計を見ると、ちょうどお昼の12時を回っていた。丸1日やっていたらしい。





画面の中の如月サキが、こちらへ一歩、また一歩と近づいてきた。




「まー君♪今日は何するぅ?」




念願の夢が叶った瞬間だった。

如月サキが腕にしがみつく。





確かに人の柔らかさや、温かさを感じる…



やっとサキに触れる事が出来た。。。



俺は胸がいっぱいに…




胸がいっぱいに…















なっていなかった。



自分でも驚くほどに。



クリアした喜びはあったが、その気持ちは直ぐに花のように散り、急に大きな喪失感に襲われた。




俺は…何をしているんだ?



如月サキの事、好きだったんじゃ…。





その時、ハッと思い出した。




どきナイが発売するより前に、彼女と付き合っていた事を。
< 12 / 17 >

この作品をシェア

pagetop