【短編】異世界の館
俺は一刻も早く家に帰ってゲームをするべく急ぎ足でレジに向かった。


レジに着くと、紳士に値段を告げられるよりも早くソフトの価格である4500円をレジ台に置いた。



しかし彼はお金を受け取る素振りは見せず、丁寧ではあるが何か威圧感のある目つきで俺をゆっくりと見上げた。



「……こちらお金は入りません。」



俺は今出した4500円を見たまま一瞬頭の中がこんがらがった。



その混乱をよそに紳士は続けた。

「このソフトはあなたの夢も叶えましょう。ただし、夢が叶わくば代わりの物をもらいに行きます。」


仙人紳士は訳のわからない事を話したが、今の俺にはそれより何よりこのゲームを早くする事だけが頭いっぱいに広がっていた。



「あー…まぁいいや。じゃあお言葉に甘えてもらいます。」


俺は頭がイカれているであろう紳士を横目で見ながらお金と「どきナイ③」を持って店を出た。





「ラッキー!まさか無料で手に入るとはな。」


俺は崩れかけの髪型を少し整えながらJR線に向かって歩き出した。


まさかアレが忠告であったのも知らずに……
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