わがまま即興曲。
あれは…中三になって間もない昼休み。

私はクラスメイトとお弁当を食べるなんて、
初めての経験だったから、
すごく嬉しかったのを良く覚えている。



「雪乃って、陸上部なのに、
生徒会にも入ってるの?
すっごい!!
忙しくない?
陸上部ってほぼ毎日、練習あるじゃん。」

雪乃というのは、
たきのりの前の席の子、高橋雪乃のこと。

「うーん。私、忙しい方が好きだから。」

陸上部所属のスポーツ少女であり、
生徒会にも自ら進んで入るくらいの良い子なのだ。

…雪乃は私の噂も知っていたらしいけど、
全然気にしたことないと言ってくれた。

「私は絶対無理だわ。
彩音は?なんか部活入ってるの?」

たきのりと雪乃も、
去年はじめて知り合ったらしい。
陸上部と生徒会の掛け持ちということに驚いていた。

私も部活を聞かれたけど…

「あ…私は、
体…弱いから…部活とかしてない。」

と答える事しかできない。
ひいちゃった…かな?
せっかく友達になれたのに、
病弱ってことでひかれちゃったら、嫌だな。

そう思って、

「で、でも!
ピアノはやってるよ。」

私は必死で言ってしまった。

そうしたら…

「ほんとに!?
私、合唱部なんだけどさ、
今、ピアノ伴奏の子探してて、
よかったら、やってくれない?
明日の放課後、空いてる?」

たきのりは想像以上に食いついた。

「え、ええ?私が?
明日なら、空いてるけど。」

「じゃあ、決まり。
明日、とりあえず見学に来てよ。」

「う、うん。」

…こういうことで、
私はいまだに伴奏を手伝っている。
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