わがまま即興曲。
それなのに…

「ほら、私、音感ないし。」

「ああ?今、なんつった?」

確かにこいつはびっくりするくらい音感ないけどさ。
でも…

「たきのりに音感ないのは、
今更じゃね?」

今更何言ってんだ?こいつ。

たきのりは相変わらず何考えてるかわからない。

私を合唱部に引き入れたくせに、
自分だけやめるとか、後ろめたいとか思わないわけ?

…まあ、思わないだろうな。
たきのりだしな。

別に合唱部に入ったことに、なんの後悔もしていない。

誰かに必要とされることの嬉しさを初めて知ったし、
合唱部には、たきのりと雪乃以外の友達もできた。

たきのりがいなくても、
楽しいといえば、楽しいけれど…


でも、
やっぱり…なかなか会えないのは寂しいと思ってしまった。



「ところで、 たきのりは試合もう終わった?」

「うん、終わった。 もうフリーだよ。」

「お!仲間ー まあ、私は最初っからフリーだけどな。 応援しまくり。」

…本当は谷中先生のストーカーしまくり。だったけど…

「今から雪乃の応援に行くよ。」

と、たきのり。

「雪乃、今年もテニス?」

「うん。今年も学年戦出るって。」
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