わがまま即興曲。
「僕は…僕は…」

「兄貴?」

「でも、駄目だよ。
それは、あってはならないことだから。」

「………」

「彩音さんはただの患者なんだ!」

自分に思い聞かせるように言う。

「本当にそれでいいのかよ?」

「当たり前でしょ?
そうじゃなきゃ、駄目だ。」

僕がそう言うと、
守の口から予想外な発言が飛び出す。

「でも、最近の兄貴、すごく生き生きしてるけど?」

え?

「僕が?」

「今までは、仕事の話なんて、絶対俺にしなかったじゃん?
だけど、最近は中野の話を兄貴からよく聞く。」

「それは…彩音さんが守の学校の生徒だからであって…」

「でも、兄貴。
中野の話をしてるとき、
自分では気づかないかもしれないけど、
本当に楽しそうだぜ?」

「え?」




「患者の話というより、
一人の仲良しな女の子の話みたいに話してる。」




全然、気づかなかった…

確かに、彩音さんと話していると、
彩音さんが患者だと忘れてしまう時がある。

それは、あってはならないはずなのに…

じゃあ、彩音さんは何なの?って話になってしまうのに…
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