わがまま即興曲。
そして、彩音さんが退院した。

退院していく日まで、不安そうだった彩音さん。

動きまわるのは体に良くないと、
自分でもわかっているだろうはずなのに、

不安でいてもたってもいられなかったんだろう。

どうしてあげることもできない自分が歯痒かった。

だから、退院していった時の明るい彩音さんの姿を、

「私がいなくなるからって、寂しがるなよ?」

って、僕をからかう笑顔を見て、本当に嬉しくなったんだ。




「…先生?谷中先生?
聞いていますか?」

え?

「あ!はい!えっと…」

そんなことを考えていたら、進本さんに話しかけられていたことを忘れてしまった。

「はあ…」

ため息をつく進本さん。
…怖い。

「…すみません。」

進本さんは、
相変わらず無表情で、
なに考えているのかわからないんだけれど、

すごく勘が良いというか、

鋭いというか…



「あの子のことを考えていたのですか?」



ほら。
見抜かれている。
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