わがまま即興曲。
「彩音さん、今、薬、持ってる?」

え?
薬?

「持ってるけど…なんで?」

「少しですが、不整脈が出てます。」

なんと!
どうりで、動悸、息切れがするわけだよ。

先生の腕の中にいるから、
緊張で心臓がバクバクして、
息苦しいんだと思ってたけど、
そういうことか。

でも、なんでわかったの?

と思って、
ふと見ると、

がっつり手首を捕まれていた。

ああ。
だから黙って脈を測ってたのね。

「さすが、医者。」

思わず、感心した言葉が口から出てしまった。

「とりあえず、大きな発作が起こる前に、
薬を飲んで。」

そう言って、
私を目の前のベンチに座らせ、
今度は首に手を当てられ、脈を測られた。

………これがいけないんじゃないかな?

まあ、明らかにハードな木登りしたのがいけないんだけど、
先生の行動、ひとつひとつに緊張するし、
変な気分になるもんだから、そう思いたくもなった。
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