わがまま即興曲。
モヤモヤと考えていると、

空に花火が開いた。


「うわあ…綺麗…」

「ですね。」

思わず感想をもらすと、
先生も同意してくれた。


「やっぱり、花火大会なんだから、
花火みて帰らないとね。」

ついうっかり本音を言ってしまった。

「…僕としては、体のことも考えて早く帰って……」

私の発言を聞いて、先生は案の定、まじめくさった発言をする。

「あー!もう!うるさい!
先生は私と花火みるのが不満なわけ?」

「そういうわけでは…」

「私は大丈夫だから…さ?
むしろ、なんかごめん…」

考えたら、花火をみにきた先生が、
私と会ったがために、楽しめなかったら可哀想である。
完全にプライベートな状況で患者と会えば、
楽しめるものも楽しめないのでは?

「え?なんで、謝るの?」

先生は私が謝った理由がわからないらしい。

「いや、今は仕事中じゃないのに…
私と会ったから…なんか…」

「そんなことか。
大丈夫。思いつきで来ただけだし、
むしろ、僕は彩音さんと花火みれてうれしいよ?」

え?
うれしい?
私とみれて?

「どうして?」

普通、外で患者と会うのって嫌じゃない?

「どうしてって…あれ?どうしてだろ?」

先生もわからないらしい。

「なんだ、それ?」

「とにかく。
彩音さんといるのは楽しいんだ。」
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