わがまま即興曲。
「患者はひとりではありません。辛くても乗り越えなければいけないこと、ですから。」

他の患者にはみせてはいけない部分。

「そうね。患者さんはひとりではないもの。医者に立ち止まる時間はない。
そして…」

「やめ…」


やめてくれ。

ここまでで、言いたいことはわかった。

だから、もうやめてくれ。

その先を言わないでくれ。




「彩音ちゃんも患者よ?」



ああ…

言われてしまった。

一番考えないようにしていたこと。



彩音さんは患者。
僕は主治医。



今まで、そう考えて盾にしてきた事実が、
今度は剣となって僕に斬りかかる。


そう、それはつまり、もしも彩音さんに何かがあっても他の患者と同じように平然としていなければいけないということ。
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