わがまま即興曲。
あの時、彩音さんに怒ってしまったのは…




彩音さんが患者であるという事実から目を背けたいと思ってしまった自分への怒り。



どんなに楽しく話していても、いつ何が起こるかわからない患者。



同じ病気のるるちゃんの手術をしたことで、そのことに気づいてしまった。


そして怖くなった。


《僕は彩音さんの主治医です。》


あの時、彩音さんに言った言葉は、
僕が僕自身に言い聞かせるための言葉。


主治医としての僕の心を保つにはそう自分に言い聞かせるしかなかった。


このままではダメだ。
これ以上はダメなのだ。


引き返せなく、なってしまう。


だから僕は、


僕は、


自分を守りたいがために、


彩音さんを突き放した。



それなのに、
医者として間違っていなければいいなどと、
自分を正当化して…
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