わがまま即興曲。
「たしかに、たきのり鈍感だしそういうの気にしなさそう…」

あ、これ悪口です。

「どういう意味だ、彩音?てか別にそういうんだったらたまには彩音が歌えば良くない?」

「はあ?何言ってんの??」

「あーもう、なんでもいいや。とりあえず、ふたりのどっちかが出てね!はい!よろしく!」

「「ええええ!!!」」



というわけで、この昼休み、
たきのりと私がお互いに押し付け合っている。


「そもそも私が歌ったら伴奏誰がやんだよ?」

「合唱部でやったことある曲なら晶子先輩が弾くって言ってたけど」

「そうだった…」


晶子先輩もピアノは普通に弾けるから3日もあれば余裕なのだろう。


「でも…」

私がやるとして、
もしも、直前に発作とか起こして、迷惑をかけたらどうしようとか
そんな考えが頭をよぎる。


「お願い!!!!今週の土曜日は家族で出かける約束が!!」


私の不安など知らないで懇願するたきのり。


ふと、思った。

こんなにたきのりに頼まれたこと、あっただろうか?

いつも、私がわがままばかりいっていたのではないだろうか。


…仕方ない。


「いいよ。わかった。私がやる。」
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