わがまま即興曲。
…はあ。

もう何百回と、このやりとりをした気がする。
何を言っても無駄なのもよくわかってる。

「…トイレ行ってくる。」

これ以上話してても、イライラしてくるだけだから、
この場をちょっと離れることにした。



廊下に出ると…

「ええ?中野さんの部屋のパイプ椅子を倒した?
もう!何してんのよ!
あの子の母親、怒らせると面倒くさいんだから!」
「すみません…」
「…あとで私も一緒に行くから、
もう一度、謝るよ?」

という看護師の会話が聞こえた。


…はあ。

まあ、そうなるよね。
毎回のことだけど、もう完全にクレーマー扱いだよ。

しかも…


「中野さんの部屋で何かあったんですか?
あの子はやばいらしいですよ?
おじい様かなんかが、この病院の院長と仲良くて、
何かあったら辞めさせられるとかなんとか…」
「私も聞いたことあります!
花瓶の水をベッドにこぼした看護師が、
やめさせられたことあるって。」


…はあ。

たしかにママのお父さん、
つまり私のおじいちゃんは、
よく知らないけど偉い人らしい…

つまり、ママがどんなに文句を言っても、
この病院は私を追い出すことはできないのだ。
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