36.5度のキョリ
ぴくり、眉根が揺れた。
訝しげに私に視線を這わせ、その目は私の提案の真意を探ろうとしているように見える。
「……嫌だね」
「でしょうね」
こちらだってそう簡単に提案にのってくれるとは思っていない。
「ですが、ほんの少しでいいんです。どうしても和泉くんとお話ししたくて」
「意味がわからない」
「でしょうね」
「わかってんじゃねぇか」
私の返事を馬鹿にするように鼻で笑い、席を立とうとした時。
「和泉〜、事情は分からないけど織川さんがこんなに頼んでるんだからさ。ちょっとくらいいいじゃん」