36.5度のキョリ



やれやれ。


一日で一番憂鬱な瞬間が終わり、

誰にも気付かれない程度に軽い溜め息をつく。





「千春ちゃんも熱心だね」



近くにいた女の子がそっと呟いた。


……ああ、和泉くんのことね。




「せっかく隣の席になったんだもの。どうせなら仲良くなりたいじゃない?」




そう返すと、その子は関心したように目を輝かせた。




「さっすが千春ちゃん!」



待っていたその言葉に、私は控えめに微笑んだ。



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