私であって、私でない。
「山田くん!?
え?
え!?」


「…とりあえず、落ち着けよ。」


俺は一通りさっきの話をした。


「…あ、うん。」


早川は何も言わずに、うつむいた。


「…帰るか?
駅まで送ってやってもい…「ない。」


うつむいたまま、悲しそうな声を発した早川は


さっきとはまるで別人で。


思わず俺はドキッとしてしまった。


「……。


ない?」


「…帰るとこなんて…。


私の居場所なんて…


どこにもない。」


そんなことを言う早川に俺がいった言葉は…


「じゃあ、


ここで寝泊まりすれば?」


だった。


「え…?」


「俺一人暮らしだし、


…どうせ誰もこない。」


「…でも…「おまえ、帰るとこもないのに、どうやって生活すんだよ。」


「…それは…。」


「な?


別にとって喰ったりしねぇよ…。」


「食う!?
私食べられるの!?
山田くんって人間食べるの!?」


そういう食うじゃねぇし…。


「…ここなら不便ないと思うし、いいだろ?」


「…うん。


ありがとう。」


ニコッと微笑んだコイツにドキッとしたなんて、きっと誰にも言えない。










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