そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

仕方なく会社を出て、数十分前に歩いて来た道を逆戻り。


なんだか、めっちゃ時間を無駄にしてるような気がする……


出勤ラッシュが一段落した駅のホームは空いていて、電車を待つ列の一番前に立つことが出来た。


ラッキー!これなら余裕で座れる。なんて思った次の瞬間……


―――ドン!!


強い力に背中を押され体がよろめく。咄嗟に足を踏ん張ったが直ぐ前の線路につんのめり、もう自分の力では体を支えることが出来ない。


あぁーダメだ……落ちるぅー!!


そう思った時、誰かが私の腕を掴みホームの方向に引っ張ってくれた。その反動で豪快に尻もちをつきスカートが捲れ上がって大衆の面前でパンツ丸見え状態。


「うぎゃ~!!」


情けない叫び声を上げる私に、見知らぬ男子高校生が心配そうな顔で声を掛けてきた。


「お姉さん、大丈夫?」


どうやらこの子が私の腕を引っ張って助けてくれたようだ。


「は、は、はい。有難うございます。大丈夫です」

「良かった~。でも、線路に近づき過ぎると危ないですよ」


ニッコリ笑って去って行く高校生の背中を見つめながら、私はその言葉に納得出来ず心の中で叫んでいた。


違う!!私の不注意なんかじゃない。誰かが私の背中を押したんだ!!……でも、誰がそんなことを?


慌てて辺りを見渡すが怪しい行動を取る人はなくホームは普段と何も変わらない。


それが余計に気味悪く、背筋がゾクッとして恐怖を感じた。


「いったい……誰が……」


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