そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「弱い?」
「えぇ、それだけでは鈴音さんがストーカーされてるとは言い難い。駅のホームでのことは、目撃者もなく故意に鈴音さんを突き落そうとしたかが不明ですし……
つけられていたというのも、声を掛けられたり体に触れられたりした訳じゃない。ただ、同じ方向に歩いていた人かもしれない」
「はあ……」
そう言われれば、そうかもしれない。全て私が勝手にそう感じただけだもんね……
「しかし、もしもということがありますから、暫くは外出を控えて一人で出歩かないように。それでは、また何か不信なことがあったら直ぐに連絡して下さい」
それだけ言うと彼は腕時計をチラッと見て立ち上がった。
「あ……今来たばかりなのに、もう帰っちゃうんですか?」
せっかく久しぶり会えたのに……
「すみません。私もゆっくりしたのですが、まだ仕事中なんですよ。また近い内にお邪魔させて頂きますので……」
「そうですか……」
イケメン弁護士がソソクサと帰って行きションボリしてる私をユミちゃんが慰めてくれた。
「宅磨先生は忙しい人だからね~仕方ないよ。でもさ、鈴音っちのこと心配してわざわざ来てくれたんだよー」
分かってる。分かってるけど、なんだかちょっぴり寂しい。それに、私が髪型変わったこと全然気付いてくれなかったな……
一言でいいから『なんか雰囲気変わったね』とか『似合ってるよ』とか言って欲しかった。ちょっとしたリアクションで良かったのに……
すっかり落ち込んでしまいユミちゃんが入れてくれたコーヒーをすすっていると、陸さんがチビちゃんを抱いて帰って来た。