そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

少しグズり出したチビちゃんをあやしながら陸さんが難しい顔をしてる。


今は疎遠になってるってイケメン弁護士が言ってたもんね。喧嘩でもしたのかもしれない。せっかく楽しく話してたのに……やっぱ聞かなきゃ良かった。


そう思い聞いたことを後悔してると……


「アイツとは、小学から中学まで一緒の学校だった……。でも、それだけだ」


怖い顔して"それだけだ"と言われたら、それ以上突っ込んで聞くことが出来ず口を噤む。


触れられたくない何か深い事情があるのがもしれない。それを問い詰めても彼に嫌な思いをさせるだ。


シュンとして視線を落とすと―――


「……兄貴のこと、気になるのか?」そう聞かれ慌てて顔を上げる。


「そりゃ~気になりますよ!つい最近まで兄弟が居るなんて知らなかったんですから……でも、私には会いたくないって言われたから、なんだか寂しくて……」


遠い目をした陸さんが小さなため息を漏らす。そして下を向き小声で呟くように言った。


「心配するな。アイツは、お前のことを大切に思ってた」

「えっ?それって、お兄ちゃんは私の存在を前から知ってたってことですか?」

「あぁ、知ってたよ。ずっと前からな。お前に会いたいってよく言ってた。だから今は無理でも時期が来れば、きっと会えるさ」


その言葉だけで嬉しくて泣きそうになる。


「陸さん、話してくれて有難うございます。そうですよね。いつかきっと会えますよね。……そう言えば、弁護士先生にも同じこと言われました」

「宅磨にも同じことを……?」

「はい、二人がそう言ってくれてるんですから、会えるような気がしてきました。だから私、希望を持って待ちます。

でも……前から気になってたんですが、陸さんと弁護士先生って、とっても親しそうですよね~昔からの知り合いなんですか?」


何気なくそう聞くと、意外な答えが返ってきた。


「―――宅磨は、俺のいとこだよ」



< 109 / 280 >

この作品をシェア

pagetop