そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
陸さんに社用車で迎えに来てもらい二人で親会社に向かう。
「どうでもいいが、お前、鼻息荒過ぎだぞ」
「ご心配なく!ちょっと興奮して体が酸素を欲してるだけです。気にしないで下さい」
「いいか?親会社の部長は気難しい人だ。お前がワケの分からんことを言ったらまとまる話しもまとまらなくなる。俺が話すから取り合えず黙ってろ。いいな!」
陸さんに何度もそう念を押されたが、怒りで熱くなってる私は、憎っくき部長になんて文句を言ってやろうかと、そればかり考えていた。
車をパーキングに止めプリプリしながら歩くこと数分、陸さんが入って行ったのは、それはそれは立派な大きなビル。
一歩足を踏み入れると3階部分まで吹き抜けになってる広いホールが現れ、スーツ姿の男女が忙しそうに行きかってる。
凄い……これぞ正しく私が憧れていた大企業ってやつだ……
さっきまでの怒りはどこへやら。ポカーンと辺りを眺めていると陸さんが奥にある受付カウンターの女性に軽く手を上げエレベーターに向かって歩き出した。私も慌てて後を追いエレベーターに乗り込む。
「しっかし……デッカイ会社ですねぇ~」
「当たり前だ。ここ大和商事は日本一の商社だ。社長は経団連の会長も務めてる……言わば経済界のドンだ」
「うぉー!!親分ですかー?スゲ~」
「俺が勤めてるYAMATOは、10年くらい前に大和商事に吸収合併されて子会社になったそうだ。今のYAMATOの社長は大和商事から出向してきた人間だから、本社の言うことには逆らえない。
変に逆らえば、本社に戻れなくなる可能性があるからな……」
「えっ……じゃあ、陸さんも逆らったらヤバいんじゃないんですか?」