そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
マンションの中は想像以上の豪華さで足が竦む。黒いピカピカの床は氷の様にツルツルで、大きなガラス窓の横にはデカい壺に色とりどりの花が刺さっている。
「わぁ~凄い!キラキラの電気!」
「シャンデリアだ」
「おぉ!!あんな所で大量の水漏れ……吹き出してるけど大丈夫ですか?」
「噴水だ」
「うっ!知らないじいちゃんがこっち見て笑ってる……誰?」
「コンシェルジュだろ」
「えぇ?あのじいちゃんコンシェルジュって名前なの?外人?バリバリ日本人顔してるのに……お知り合いですか?」
すると振り返った失礼男が鬼の様な形相で私を睨み付け、吐き捨てる様に言った。
「なワケねぇだろ?これ以上ふざけたことぬかしたら締め殺す!」
「ななななな……なんで?」
失礼男の怒りのツボがイマイチ分かんないよ~
「で、……部屋は何階だ?」
「あ、えっとですねー……25階の2501室……。って、えぇっ?25階?」
島の家は平屋で2階建てに憧れてたけど、それを遥かに上回る25階なんて想像も出来ない……
「でも、25階まで歩いて行くの大変ですよね?」
「そんな上まで歩いていくバカがどこに居る?エレベーターだ」
「エレベーター?それ知ってます!師匠の家のビデオテープで観たトレンディードラマに出てきた」
「トレンディードラマ?何十年前のドラマだ?それに今時、ビデオテープ?ブルーレイいだろ?」
「ブルーレイ?なんですかそれ?ビデオと言えばVHSでしょ?」
得意げにそう言うと、失礼男が刺す様な視線で私を見つめる。