そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「鈴音さん、大丈夫ですか?」
「あ……あぁ……弁護士先生……」
警察に電話を終えたイケメン弁護士が私を抱き上げ掠れた声で何度も詫びてくる。
「すみません、あなたが言っていた通りでした。私のミスです。許して下さい」
「そんな……弁護士先生のせいなんかじゃない……」
彼の頬から零れ落ちた雫が私の頬を濡らす。これは雨?それとも……
「もう少しで私は、この世で一番大切な人を失うところだった……」
あっ……
その言葉を聞き、私は複雑な心境だった。だって、私が好きなのは……陸さんだから……
イケメン弁護士の気持ちには応えられないと思いつつ彼の胸から離れることが出来ずに居ると、程なくけたたましいサイレンを鳴らしパトカーがやって来た。
警官が倒れていた男を素早く拘束する。
イケメン弁護士が事情を説明している後ろで、私はその男が誰なのかが気になり、ずっとその様子を伺っていた。
警官に両脇を抱えられ立ち上がった男の顔を初めてまともに見た瞬間、驚きで言葉を失う。
「あなたは……」
忘れもしない。その男は、喫茶店で私が初めて見掛けたお客さんだったから……
でも、私は彼と一言も喋ってないし、恨みを買うようなことはしていないはず。なのに、なぜ命を狙われなきゃいけなかったの?
連行されて行く彼を疑問の眼差しで見つめていると、突然男が振り向きニヤリと笑いながら言ったんだ……
「まだ、終わってないからな……」
「えっ?」
終わってないって……どういうこと?
その言葉の意味を知りたくてパトカーに駆け寄ろうとしたが、警官に腕を掴まれてしまった。
「被害者の方ですね?お怪我はありませんか?念の為、救急車を呼びましょうか?」