そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

うん、確かに寒い……


「はい……そうします」


陸さんが脱衣所を出て行ったのを確認し、濡れて泥だらけになった服を脱ぎ捨て湯船に浸かる。


「ふーっ……気持ちいいー」


冷えた体が徐々に温まり、やっと気持が少し落ち着いてきた。


「どうだ?熱くないか?」

「……!!」


間の抜けた顔でボーッとお湯に浸かっていたところに突然声を掛けられたものだから、驚いて危うく溺れそうになる。


アタフタしながら声がした方向に視線を向けると、擦りガラスのドアに陸さんの姿がぼんやり映っていた。


「は、はい。丁度いいです」


平静を装いそう答えたけど、動揺は隠せない。声が上ずり心臓はバクバクだ。


「着替えここに置いとくからな」

「あ、すみません……」

「で……何があった?誰に襲われたんだ?」

「それが……」


ドア越しにさっきのことを説明すると、彼も「おかしな話しだなぁ……」とため息を付く。


「ソイツが言った"まだ終わってない"ってのが気になるな。これからはなるべく俺が側に居てやるから……宅磨も居るし……心配すんな」


陸さんは私を安心させる為にそう言ったんだろうけど、私は"宅磨も居るし……"という言葉に敏感に反応した。


「あの……陸さん」

「んっ?なんだ?」

「やっぱり、処女じゃ……ダメですか?」


勇気を振り絞りそう聞いたのに、なかなか返事が返ってこない。痺れを切らし、小声で彼の名前を呼んでみると……


「なんでそんなこと聞く?」

「それは……」


まだ私には、彼に直接"好き"だと言えるだけの覚悟は出来ていなかったのかもしれない。


言葉に詰まり何も言えなくなってしまった私に、彼は衝撃的な捨て台詞を残し脱衣所を出て行く。


「処女がどうとか言う前に、このパンツをなんとかしろ。ヘソまであるようなベージュのデカパンじゃあ、立つモノも立たねぇよ」


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