そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
その後も私から離れようとしないバーバラ。強面のおっちゃんが近づくだけでシャー!っと牙を剥き威嚇してる。それでも嬉しそうに手を出すから、引っかかれて更にキズまるけだ。
このおっちゃん、どこまでMなんだ……?
すっかり呆れていると、再び喫茶店のドアが開き見覚えのある男性が入ってきたんだ。
確かこのおっちゃん、警視庁の偉い人だったような……
「太一郎君の携帯に電話をしたら奥さんが出て、"平安"に行ったと聞いたので……なんだ、多摩雄(たまお)君も来てたのか」
へぇ~強面のおっちゃん、多摩雄って言うのか……
「すまない。慌てていたから携帯を家に置いてきたようだ。それで、警視総監の君がわざわざここに来るということは、よほど大事な用件のようだな……何かあったのかね?」
「実は、昨夜、姫が暴漢に襲われた事件で新たな事実が判明したんだよ。そのことで太一郎君の意見を聞きたくて」
「新たな事実?」
冷静に対応するイカれたおっちゃんの横で、血まみれの強面のおっちゃんが驚愕の表情を見せる。
「なんだと?姫が襲われた?」
「あぁ、私の会社の元社員が、解雇を逆恨みして姫を襲ったんだ」
「いや、理由はそれだけじゃない」
警察のおっちゃんが大きく首を振る。
「事態はもっと深刻だ……」
「どういうことだ?」
少し間を置き、神妙な顔をした警察のおっちゃんが小声で話し出す。
「犯人の二階堂は、源氏の流れをくむ武士の末裔だった……」
「それは……本当か?」
「間違いない。これはただの仕返しではない。源氏による我々への宣戦布告だ!」
えっ?そっちに行っちゃうの?
困ったもんだ……またおっちゃん達のイケナイ妄想が始まってしまった。