そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

だからかな?すっかり気を許してしまい見ず知らずのばあちゃんと世間話しで盛り上がってしまった。


「おや?アンタ怪我してるの?可哀想に……ウチにおいで。薬塗ってあげるよ」

「えっ!いいんですか?」

「どうせ気ままな一人暮らしだ。遠慮なんてしなくていいよー」


悪いと思いながらも、せっかくだからばあちゃんの好意に甘えることにした。


一人暮らしとか言ってたから、こじんまりした家に住んでいるんだろうと想像してたんだけど、なんのなんの!意外にも立派な一軒家。


「へぇ~ばあちゃん家って、結構デカいんですね~」

「デカけりゃいいってもんじゃないよ。こんな大きな家に一人で住んでても掃除が大変なだけ。なんもいいことないよ」


クロちゃんの頭を撫でながら寂しそうに目を伏せる。


「家族の方は?子供さんとか居ないんですか?」

「あぁ、息子が一人居るけどね、離れて暮らしてるんだよ。嫁の言いなりでさぁーここには寄り付きもしない」


なんだかばあちゃん可哀想……


傷の手当てが終わってもばあちゃんはゆっくりしていけばいいとご飯をご馳走してくれて、バーバラにまで高級キャットフードを食べさせてくれた。


なんだか久しぶりに島のばあちゃんと居るようで心が和み時間の経つのも忘れ色んな話しをして過ごした。


でも、もう夜の10時……そろそろ帰らなくっちゃ……


「もう帰っちゃうのかい?寂しいねぇ……」

「はい……でも、また遊びに来ます」

「うん、待ってるからね。またおいで」


ばあちゃんは私の手を握りなかなか離そうとしない。そして目には薄っすら涙が……


それからばあちゃんはタクシーを呼んでくれて、タクシー代まで払ってくれた。


人情味のある優しいばあちゃんに助けられ無事に帰ることが出来たんだけど、ホッとして喫茶店のドアを開けた瞬間、思いもよらぬことが起こったんだ……


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