そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

車が止まったのは、こじんまりとした個人病院の前。診察時間はとうに過ぎていたが、お医者さんに事情を話すと直ぐに診てくれた。


「知恵熱ですね。色んな刺激で興奮すると子供は熱を出すことがあるんですよ」

「でも、下痢もしてますが……」

「何か消化に悪い物を食べさせませんでしたか?」

「消化に悪い物?お昼に離乳食を食べさせましたが……」


念の為、離乳食の内容を詳しく話すと、お医者さんが「それだ!!」とバカデカい声で叫ぶ。


「それって、どれですか?」

「離乳食にコショウはマズいなぁ~乳児には刺激が強過ぎる」

「えぇー!そーなんですかぁー?」


美味しくなったからいいと思ってたのに……。私のせいだ。陸さんになんて言って謝ればいいんだろう……


お医者さんは心配はいらないと言ってくれたけど、私のショックはハンパなく頭の中は真っ白。


イケメン弁護士のマンションに帰ってチビちゃんを寝かし付けた後も心配で一睡も出来なかった。




――――そして、次の日


日曜日だけど仕事あると出掛けて行ったイケメン弁護士。自分が帰るまでここに居るようにと言われたが、そんなこと言われなくても行く所なんてない。


もう二時間以上もチビちゃんを抱きぼんやりと窓の外を眺めている。


チビちゃんの熱は下がり下痢も治まったが、私の気持ちは全然晴れなかった。


私って、ホント、ダメな女だ……何一つまともに出来ない。こんな調子じゃ、チビちゃんのママになんかなれっこないよ。


すっかりヘコんでしまい情けなくて大きなため息を付くと、スマホが鳴り出した。


「あ……陸さんだ……」


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