そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
『……鈴音に頼みがある』
陸さんの声……なんだか元気がない。
「うん、何?」
『明日、もう一日、チビの面倒見てて欲しいんだ』
大阪での営業は芳(かんば)しくなく、昨日と今日、飛び込みも含めて多くの小売店をまわったが、予約は40ケース止まり。
だから、もう一日大阪に留まり商社を訪問したいって……
でも、残された期限は1日しかない。どんなに頑張ったって1000ケースは無理だ。それに、こんな勝手なことしてたら会社での陸さんの評価が下がっちゃうかも……
「……陸さん、諦めようよ」
そう言った私に『弱音を吐くな!』と怒鳴る陸さん。
『何度も言ってるだろ?俺は最後まで諦めないからな!』
その言葉を最後に通話は一方的に切れた。
チビちゃんが調子悪くなったことも、ボヤ騒ぎのことも言えなかったな……
スマホを絨毯の上に投げ捨て、またため息を付く。
陸さんはオッパイを発売出来るよう頑張ってくれてるのに、私は何してるんだろう……なんでもいい。私に出来ることはないの?
眉間にシワを寄せ真剣に考えてみる。
「あ……そうだ!」
もう一つ条件があったんだ。でも、陸さんは教えてくれないし……こうなったら、あの女部長に会いに行ってそれが何か聞くしかない。
イケメン弁護士にはどこにも行くなと言われたが、そんなこと知ったこっちゃない!
チビちゃんも元気になったし、外に連れ出しても大丈夫だよね。そうと決まれば善は急げだ!
日曜日だから会社は休みかもしれないけど、デッカイ会社だから誰が居るだろうし、女部長の住所を教えてもらおう。
ミルク用のお湯を沸かし、オムツとおしり拭き着替えも用意する。チビちゃんをおんぶ紐で背負いバーバラを小脇に抱えて準備万端。
よし!完璧!目指すは大和商事。いざ、出陣だー!!