そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
大和商事のビルの前に横付けされたタクシーを降り、気合いを入れて歩きだす。
おっ!休みかと思ったけど人が一杯居る。これなら女部長も居るかも!
玄関を入り、相変わらず多くの人が忙しそうに行きかう中を堂々と受け付け目指し突進して行く。
「すみません!私、小林鈴音、申年生まれの21歳です。販売部の色っぽい女部長さんに会わせて下さい!」
大声でそう言って頭を下げると受付の綺麗なお姉さんがなぜか口をポカーンと開け、珍しいモノでも見るような目で私をマジマジと見つめた。
「あの~女部長さんに会いたいんですが……」
「あ、はい。販売部の女性の部長と言いますと、佐々木のことでしょうか?」
「名前なんて知りません。髪の長いオッパイの大きい部長さんです」
「オッパ……わ、分かりました。おそらく佐々木だと思いますので確認してみます……」
受付のお姉さんがオドオドしながら内線電話の受話器を取る。
「こちら受付ですが、佐々木部長は……あ、そうですか。お客様が受付の方にいらっしゃってまして……はい、赤ちゃんをおぶって猫を抱えた小林鈴音様という方です」
そして、受話器を手で覆い「……不審者かもしれません。警備員を呼びますか?……はい、では宜しくお願いします」って、モロ聞こえなんだけど……
不審者とは失礼な!!チビちゃんをおんぶして、バーバラを抱えたこの微笑ましい姿のどこが怪しいって言うの?
ムカついてお姉さんをキッと睨んだら、慌てたお姉さんが立ち上がり早口で喋りだす。
「申し訳御座いません。本日、佐々木は出張しておりまして、代わりに販売部主任の小林がお話しをお伺いすると申しております。もう少々、お待ち頂けますか?」
―――出張?
「えぇーっ!女部長さん居ないのー?」