そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「えっ?ホント?」
慌てて引き返し例の条件のことを聞いてみると、ユウキはコクリと頷き小声で言う。
「あぁ、佐々木部長から大体のことは聞いてる。発売して欲しかったら10日間で1000ケース売れとか言われたんだろ?
それも、大和商事と取引のない所なんて……そんなの絶対無理だもんな」
「絶対……無理?」
「そりゃそーだろ?佐々木部長は無理だと分かってて、ワザとその条件を出したんだから……」
無理だと分かっててワザと?
「……何それ?どういうこと?」
ユウキを睨み付けながらそう聞くと、彼は辺りを気にしながら人けのない階段の下に私を連れて行く。
「ここだけの話しだけど……佐々木部長は"魅惑のおっぱい"の商品化なんてどうでもいいんだよ。部長の狙いは、小林陸さ」
ユウキが教えてくれた女部長の本当の狙い。それは到底、納得出来るモノではなかった。
女部長は以前から陸さんを大和商事の本社に呼び、自分の部下として働けと言ってたそうだ。けど、陸さんはその話しを断り続けていた。
そんな時、陸さんが勤めてるYAMATOの社長から、陸さんがビックワールドの若い女性が企画した商品にやたら力を入れ他の仕事が疎かになっていると聞かされ激怒した。
「お気に入りの小林陸が自分以外の女と親しくしているのが許せなかったんだろうな。
つまり、クリア出来そうもない条件はフェイクで、もう一つの条件を呑ませるのが本当の狙いってワケさ。そうやって、小林陸を大和商事に引っ張ろうとしたんだよ」
「ちょっと待って……じゃあ、もう一つの条件っていうのは……」
「そう、小林陸が大和商事の社員になり、佐々木部長の部下になるってのが、もう一つの条件。でも、それだけじゃない……」