そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
私の前で立ち止まったのは、ビルの入り口に立っていた警備員のおっちゃん。年は50過ぎってとこか?
「お母さん……」
突然そう声を掛けられ目が点。
「えっ?私のこと?」
「はい、あなたですよ。お母さん」
「ちょっと待って!私、おっちゃんを産んだ覚えはないけど」
真剣な顔でそう言うと、警備員のおっちゃんがチビちゃんを指差し「この子のお母さんでしょ?」って、プッと吹き出した。
あ、あぁ……そーゆーことか……
「それより、大丈夫ですか?」
「へっ?何が?」
「いや……なんだか思い詰めた顔をしているようにお見受けしたので……。さっき話していたここの社員と何かあったのかと思いまして……」
それって、ユウキのこと?
「いえいえ、何もないですよ」
「そうですか。なら、いいんですが……」
そう言いながら振り返ってエレベーターに乗り込むユウキを見つめてる。そしてもう一度、「本当に大丈夫なんですね?」と念を押してくる。
なんだか意味有り気なその態度が気になり理由を聞いてみたら、逆に質問を返された。
「失礼ですが、あの社員と付き合っているんでしょうか?」
なんでそんなこと聞くの?と不思議に思ったけど、別に隠すことなんて何もない。正直にユウキとは出身地が同じってだけで、特に親しいワケじゃないと答えるとおっちゃんは安心したようにニッコリ笑った。
「いやね、実は以前にも同じようなことがありまして……」
んっ?同じこと?