そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

「どういうことですか?」

「あ、いや……それは……」


おい!おい!今まで散々質問しといて、どうしてここで話しを濁す?


「教えて下さいよーこのままじゃ、気になって帰れませんよー」


しつこく食い下がると、ようやくおっちゃんが口を開いた。


「僕が言ったってことは秘密にして頂けますか?」


なんて、調子のいいこと言ってるし……


「うんうん、秘密にする!絶対、誰にも言わない!」


当然、私はそう答える。


「分かりました。実はですね……
半年ほど前、赤ん坊を連れた若い女性が彼を訊ねて来たんです。

その時もここで何やら話し込んでいたんですが、その女性が急に泣き出したと思ったら、バックからナイフを取り出し、ソレを振り回して大騒動になったことがあったんですよ」

「マ、マジですか?」

「はい、そのことを思い出してちょっと心配になりまして……
彼はその女性を友達の彼女で、別れ話しがこじれて間に入った自分を逆恨みしたと言ってましたが、私はどうも納得いかなくて……

本当は、あの女性と別れ話しをしていたのは彼本人で、女性が連れていた赤ん坊は彼の子供だったんじゃないかと思いましてね」

「なるほど……で、その女性はどうなったんですか?」

「はあ……可哀想だと思ったんですが、警察に引き渡しました」


そっか、こんなとこでナイフを振り回したんだもんな……仕方ないか……


「あの時、もっと二人を気に掛けていたら、あんな騒動にはならなかったのかもしれません」


おっちゃんは相当後悔してるようで、俯き辛そうな顔してる。


「おっちゃんのせいじゃないですよ。それに、子供の頃のユウキは根性悪かったけど、今は人並みになったみたいだし、本当に友達の為に話ししてたのかもしれないですからね」


笑ってそう言った私を真顔で見つめたおっちゃんが首を振る。


「いや、あなたがこれからもあの社員と関わるなら、気を付けた方がいい……」


< 176 / 280 >

この作品をシェア

pagetop