そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「そうだ!昔流行ったドラマのビデオがあるけど……鈴音ちゃん観る?」
「ビデオ……?」
師匠が言うには、30年ほど前に彼もまた都会に憧れ既に都会に出ていた友人に頼みダビングしたドラマや映画のビデオを送ってもらってたそうで、今でもソレを大切に持っていた。
「ほら、これがトレンディードラマだよ。この頃はバブル全盛期だったからなぁ~いい時代だったよ」
懐かしそうに目を細める師匠に説明を受けながら、私が生まれる前にブレークした昭和時代のドラマをガン見。
「師匠!皆同じ髪型して凄いイカリ肩やん!それに、眉毛がありえんいくらいド太い!」
「それはね、ワンレンボディコンって言って、服には大きな肩パットが入っていて当時流行ってたファッションなんだ」
「ワンタンにデコポン?……大きな肩バット?」
師匠の説明はイマイチ理解出来なかったけど、私はそのドラマにすっかりハマってしまった。来る日も来る日も師匠の家に入り浸りビデオ三昧の日々。
私が東京という街に憧れを持つようになるまでそれほど時間は掛らなかった……
「師匠!私、東京行きたい!」
「そうか~鈴音ちゃんもとうとう目覚めたねぇ~いいよ。僕がお世話してあげるから」
「ホンマか?」
実は、目覚めたのはそれだけじゃなかった。スーツが似合う都会の男にハートをズキュン!と射抜かれてしまったんだ。東京に行ってこんな素敵な彼氏を作りたい!と密かに思うようになっていた。
「うん、でもね、お金掛るよ。貯金とかあるの?」
「あ……」
その日暮らしの私に貯金なんてあるワケない。
「それに、その方言は直した方がいいね。標準語喋れるようにならないと……」