そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

鬼の形相で近づいて来るユウキを見た瞬間、只ならぬ殺気を感じ、あんなに気にしてたはずのバックのことなど、もうどうでもいいやって思ってしまった。


今はバックより命を守ることが最優先。


逃げないと……私、ユウキ殺されるかもしれない……


再びエレベーターのボタンを連打するがエレベーターは一階で止まったままだ。こうなったら階段から逃げるしかない。


私を捕まえようと伸びてきたユウキの腕をかわし走り出すも、腕の自由を奪われているからバランスが上手く取れずよろけてしまう。


で、数歩足を踏み出した所で絨毯に躓きそのまま倒れて顔面を強打。


「ウゲッ!」

「ったく……手間取らせやがって……」


倒れたまま顔を上げると目の前でユウキが仁王立ちして私を睨んでる。


あぁ……万事休す……


そして、いとも簡単に捕まってしまった私は廊下を引きずられて行く。


あの時と同じだ……前もこうやってジョーに引きずられたんだ……そんで、多摩雄のおっちゃんに助けてもらった。


……んっ?まてよ……もしかして、また多摩雄のおっちゃんがここに居たりして……


まさかとは思ったが、万策尽きた私には、もうそのまさかに賭けるしかなかったんだ。


「誰かぁー!助けてー!!」


引きずられながら大声で叫ぶ。ユウキに「黙れ!」と怒鳴られてもひるむことなく叫び続けた。


でも、廊下は静まり返り私のスーパーヒーロー多摩雄のおっちゃんが現れることはなかった。


だよね……いくらなんでもあんな偶然二回もないよね……と諦めかけた時……


―――チーン……


エレベーターが到着した音が響き扉が開く。そして降りてきたのは、見覚えのある男女のカップル。


えっ?マジ?

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