そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
なんとか無事にホテルを出てタクシーに乗ることが出来た。でも、ホッとしたのもつかの間。結局、私は陸さんの力にはなれなかったんだと落ち込んでしまう。
いや、それどころかユウキにまんまと騙され、危うくチビちゃんも巻き込んでしまうとこだった。自分のバカさ加減にほとほと嫌気がさす。
タクシーを降り、ガックリ肩を落として喫茶店の扉を開けると、カウンターの椅子に座っているスーツ姿の男性が目に飛び込んできた。
うわっ!!イケメン弁護士だ!ヤバ……
今日は彼の部屋から出るなと言われていたのを思い出し全身の毛穴から汗が噴き出す。
「鈴音さん、やっと帰って来ましたね……私との約束を忘れたのですか?」
怒鳴られると思ったのに……でも冷静な話し方が逆におっかない。
「あ、いや……覚えてたんですけど、ちょっと非常事態で……」
「ほぉ~非常事態?それは陸に関係してること……ですね?」
さすが弁護士、鋭い!
「困りましたね。鈴音さんは、自分が危険な状態だということを全く自覚してない。やはり陸と一緒に住むのは問題がありますね……」
「えっ……」
「陸にはここを出て行ってもらいましょう」
唐突にそんなこと言われても困る。
「お断りです!だいたい、弁護士先生はなんの権利があってそんなこと言うんですか?」
「権利?」
「そうでしょ?別に私の家族でもなきけりゃ、彼氏でもない。お母さんに頼まれて仕事で私に関わっているだけでしょ?
なのに、プライベートなことまで首を突っ込んできて文句ばっか!もう私のことは放っといて下さい!弁護士先生なんて、大嫌い!」