そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

『はぁ~?東京で一緒に~?お前はアホか?誰がそんなとこへ行くか!まっぴごめんだよ~』


予想通りのリアクションだ……


「いやいや、住んだら結構いいかもやで。便利やし、なんでも売ってるし……」

『ケッ!もう都会ボケか?そんなことより餞別の百倍返しはまだなんか~?早よ金送れ~』


チッ……餞別のこと忘れてるかと思ってたけど、覚えてたのか?やっぱ、金にはシビアだな……


なんて思いながら私はあのことをばあちゃんに言うべきか迷っていた。


それは、お母さんのこと―――


ばあちゃんは私にお母さんは死んだと言い続けてきたけど、そのお母さんが最近、本当に死んだという事実を知ってるのかな?


言うべきか……言わざるべきか……めっちゃ悩む。


このまま黙っていようかとも思った。でも、過去に二人の間に何があったかは知らないが、ばあちゃんにとってはたった一人の娘だ。知る権利はある……


「あの、ばあちゃん……」

『鈴音、ひつこいよ!私は島を出るつもりはないんだ!諦めな!』

「そうやなくて……」

『んっ?』

「お母さんのこと……ばあちゃんはお母さんが死んだって言うとったけど、それ、嘘やったんやな?生きとったんやろ?」


ばあちゃんからはなんの言葉も返ってこない。


「けどな、本当に死んだんやよ……今年の四月……私が東京に出てくるちょっと前に……ばあちゃん知っとった?」


何度問い掛けてもばあちゃんは一言も発しなかった。ただ、荒い息遣いだけが聞こえてくるのみ。


「今、お母さんが住んどった家で暮らしとる。やから、ばあちゃんもここに来てお母さんの家で一緒に住もや」


必死でそう訴えたけど、とうとうばあちゃんは何も言わず電話を切ってしまった。


―――きっと、それがはあちゃんの答えだったんだろう……


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