そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
私は即行でイカれたおっちゃんの携帯に電話した。けど、まさかの留守電。
「うっそー!!なんでこんな大事な時に留守電になってるのー?」
あぁ~もう時間がない。とにかく大和商事に行って陸さんを止めないと……
「ユミちゃんさん、私、大和商事に行ってきます!!」
そう叫んだ時にはもう喫茶店を飛び出していた。タクシーを拾い車内から陸さんに電話する。けど、呼び出し音は鳴るのに出てくれない。
陸さん……どうして出てくれないの?私のことまだ怒ってるから?
それからも陸さんとイカれたおっちゃんに何度も電話したけど、二人が電話に出ることはなかった。
距離的に陸さんはもう大和商事に着いてるはず。間に合わない。
「はぁーっ……ダメだ」
半分諦めてスマホを座席に放り投げた時だった。突然スマホが鳴り出し慌てて拾い上げる。
でもそれは、陸さんでもイカれたおっちゃんからでもなかった。
「……クロちゃんのばあちゃん」
以前、陸さんに無理やり車を降ろされた時、公園で出会った黒ネコを連れたばあちゃんからだ。
ばあちゃんの家で盛り上がって携帯番号を交換したことを思い出す。
また遊びに来るって約束したのに、あれから連絡取ってないから遊びに来いって催促の電話かな?
でもこんな時に……
無視しようと思ったけど、呼び出し音はなかなか鳴り止まず仕方なくディスプレイをタッチする。
『鈴音ちゃん、久しぶり~元気?』
「あ、はい……あの~申し訳ないんですが、今、取り込んでて……」
『そうなの?それは悪いことしたね~じゃあ、用件だけ伝えとくよ。鈴音ちゃんさぁ、オッパイの形をしたチョコを1000ケース売らなきゃいけないって愚痴ってただろ?
あれ、もう全部売れた?』