そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「あ、いえ、まだですけど……」
『そうか~なら丁度良かった。
実はさ、私の息子に話してみたんだよ。あ、ウチの息子、埼玉でスーパー経営してて支店も幾つか出してるから鈴音ちゃんの助けになるんじゃないと思ってさ~』
埼玉でスーパーを経営?
「えっ?て、ことは……ばあちゃんの息子さんってスーパーの社長さんなの?」
『そーそー!普段は音沙汰なしで親不孝してんだから、たまには親の言うこと聞け!って怒鳴ってやったら分かったって……で、後どのくらい売れ残っているのか聞きたくて電話したんだけど……』
「マ、マジ?オッパイ買ってくれるの?」
『あぁ、大事な友達が困ってんだ。力になるよー』
なんという朗報!ギリギリのところで間に合った。でもまさかクロちゃんのばあちゃんの息子がスーパーの社長だったとは……
あぁ~神様!この偶然の出会に感謝します!!
「ばあちゃん、ありがと~?75ケース売れ残ってて、どうしようかと思ってたとこだったんだ~」
『75ケースでいいのかい?そんなら全部買ってやるよ!』
「うひょ~!!ばあちゃん、太っ腹~」
感激して絶叫する私に、ばあちゃんは優しく囁いた。
『当然だろ?友達なんだから……』
「……ばあちゃん」
その時、分かった。クロちゃんのばあちゃんは寂しかったんだと……
どんなにお金があって、大きな家に住んで立派な息子が居ても、一人は寂しい。だから一度しか会ったことのない私にこんなに親切にしてくれるんだ……
なのに私ったら、遊びに行くって約束さえ忘れてた……ごめんね……ばあちゃん
『またシロちゃん連れて遊びにおいで』
「うん、行くよ。絶対に行く……」
そして、私はもう一人のばあちゃんの顔を思い出していた。
島のばあちゃんも一人にしておけない。どんなことがあっても東京に呼び寄せよう。